医学部多浪が引きこもりに転落するまでの過程を説明します。
「 引きこもりしながら適当に受験してたら、25になっちゃっただけなんですけどね」
医学部へ進学したCARPE・FIDEM卒業生
医学部と引きこもりには、何故か不思議な親和性があります。
医学部受験と引きこもりの発生
元々、CARPE・FIDEMは不登校や 引きこもり の子達を対象とした塾として発足し、前身も含めれば、その期間は既に20年に及びます。時間は経ちましたが、対象者については今でも特に変わらず、参加者のほぼ全てが、不登校や引きこもりを何らかの形で経験しています。
ただ、20年前にほぼ存在しなかったケースが、最近になって少しずつ増えてきました。引きこもり化した、医学部多浪生の存在です。彼等は、高校進学までは比較的普通に推移したものの、その後の大学進学失敗をきっかけにして、引きこもりへとスライドしています。
一般的な引きこもりや不登校経験者は、大体が高校中退や、中学校未経験であるのに対し、彼等は高卒、しかも一流進学校卒業のような、誰もが羨むような経歴の持ち主であることも珍しくありません。いじめや友人関係のトラブルも少なく、平穏に高校生活を送ってきたケースの方が主流であることから見ても、彼等の「躓き」は、一般的な不登校・引きこもり層とは少々事情が異なります。
では、何が問題となって、彼等は引きこもりに転落するのでしょうか?
医学部受験で多浪や再受験が発生する要因
受験上位層においては一般的な話ですが、一定以上の学力を保持した高校生にとって、医学部は、費用対効果の非常に良い進学先です。「一般的な医学部」と「東大理科一類・二類や早慶理工系学部」は、大筋で偏差値ゾーンが被っていますが、前者の就職後の平均的所得水準は1,000万円~1,500万円に達し、後者の大筋1,5~2倍。開業することで、その額は更に倍加します。上場企業の役員や、外資系金融機関の関係者でもない限り、この水準を超えるのは中々に困難です。
つまり、平均年収が450万円前後の現在の日本の実情を鑑みれば、卒業して経験を十分に積むことで、一部上場企業部長級職と同程度の所得を確保出来る点が、利点の一つ。そして、開業することで、比較的安定度の高い経営者としての側面さえ確保出来る点が、もう一つ。このような条件が揃えば、仮に「医師」という職業が受験生にとって非常に魅力的に映ったとしても、特段おかしい話ではありません。まして、既に医師としての業務を確立させた家庭であれば、子に同じ方向性を薦めたとしても、不自然ではないでしょう。
また、経済的側面のみならず、医師は、所謂「やりがい」にも恵まれています。医師とは、誰よりも感謝される仕事です。社会人なら、誰しも自分の仕事には誇りを持つでしょうし、同時に、自身の労苦の結果が社会で上手く機能し、人々のためになることを深く望んでいることでしょう。しかし、チャールズ・チャップリンの「モダン・タイムス」を持ち出すまでもなく、業務が細分化され、個々人が各事業単位の中で矮小化されている昨今、一般の社会人は、サービス受益者からの「感謝」という最大の恩恵からも遙かに遠ざけられてしまっており、自分の仕事が、社会のどこで役に立っているのか、全く見えなくなっています。
一方、患者さんの困難を目の前にし、実際の治療に当たる医師は、そのような近・現代以降の固有の事情とは全く別の立ち位置にいます。身体を基盤としたサービス業故、受益者である患者さんから離れることはほとんど無く、医療保険システムという一般企業の仕組みとは正反対の収益構造になっている関係で、「感謝」もまた、分かりやすく見えやすいのかも知れません。
結果、医師という職業に対する希求の程度は、その他の学部の受験生とは比較にならず、仮に経年があったにしても受験を続ける人や、一度大学を卒業し、社会人になった後に医学部へ入り直そうとする人達も珍しくありません。実際、CARPE・FIDEMの卒業生で、現在地方国公立大の医学部に在籍している子達からも、
「受験会場で、東大や早慶の再受験組結構いましたよ」
「同級生に、奥さんと子供もいる総合商社出身の人がいて驚いた」
のような話を聞いたりしますが、これもその一例なのでしょう。「東大や京大、早慶に進むよりも、医学部に進学した方がメリットも大きい」そう考えるだけの十分な事情が、ここにはあるのです。
医学部多浪引きこもりの声
他方、その別側面として、何らかの事情により浪人期間が続き、なし崩し的に引きこもり・不登校になってしまう学生さんも出てきます。事情はそれぞれのようですが、当人達の話を聞く限り、
〇学力に合わないレベル設定をしていたら、届かなくて気分が落ち込んでしまった。
〇本当のところ、自分が何になりたいのかまだ分かっていない。
〇勉強はするんだけど、どこか変なところで空回りしてしまう。
〇親の病院を継がないといけないというプレッシャーが嫌だ。
〇周囲がどんどん先に行く中で、自分だけ取り残されている空気に負けてしまう。
等が多いようで、何らかの外的圧力が必要な様子が見て取れます。
また、親御さんからも、
〇家業(病院経営)の関係で、息子に無理をさせ過ぎました。
〇進学校だったので、何となく親の方で医学部という流れにさせてしまった。
〇本人の意志だったとは言え、勉強に対するメリハリが甘かったと痛感してる。
〇親の側で、大学の要求レベルを上げ過ぎてしまった。
〇最初に合格した医学部に行かせておけば良かった
等の話があり、家庭によっては既に八方塞がりな状況に陥っている場合もあります。
医学部受験生の引きこもりは無意味
ただ、客観的視点からすれば、医学部で浪人期間が延びる際、大体の場合は、本人の能力的問題と言うよりも、寧ろ、
〇本人の思い込みが強くて、同じことの繰り返しになり、学習効率が上がらない。
〇朝が起きられなくて、次第に学習量が減り、学習速度も遅くなる。
というパターンが多いようで、その点を修正するだけで、比較的短期間で合格に繋がることが分かっています。特に、知識習得を目的とした学習は上手いものの、頭の回転速度を上げる学習については無頓着な人が多く、その場合には、
「問題は見たことあるし、知ってるけど、時間が足らなくて……」
のような状況に陥るようです。しかし、これは訓練方法の問題であって、個人の能力の問題ではありません。外部からの適切な指導があれば、容易に解決出来る問題です。
また、生活リズムの破綻も、この手の失敗にはつきものですが、最悪なのが、
〇昼以降にダラダラ起きてきて、夕方から明け方まで漫然と勉強
のようなパターンです。
夜に勉強しているので、本人は勉強した気にはなっていますが、大体が集中しておらず、「アニメを見ながら」「ラジオを聞きながら」「ネットを確認しながら」等のケースをよく見かけます。ただ、この姿勢で、「授業を受け、その後に自習室にこもり、夕方以降帰宅して寝る」という「普通の」生活をしている受験生に勝てるはずがありません。
つまり、なし崩し的におかしくなった学習法を修正し、生活をきちんと立て直せれば、大体の問題は解決するわけで、現実的にはそこまで困難な話ではないのです。
同様の問題に対処して既に10年程が経過しますが、実質的な対処法はある程度完成し、立て直しまでのルートも安定的に確立されてきました。これは現在では、「医学短期集中講座」としてパッケージ化されています。
参考:「医学部短期集中講座の詳細」
職業意識もあり、未来への強い希望もあり、社会に対して貢献しようという気持ちもある人材が、引きこもり化して無為な毎日を過ごすのは決して賢いことではありません。人手不足が叫ばれる現在の日本において、優秀な人材は、早急に社会へ出て、人々のために活動すべきだと考えます。ほんの些細な修正作業だけでそれが可能となるなら、それに越したことはありません。
CARPE・FIDEMは、未来のエリート層の育成を全力でサポートします。