以前記事にした話題
「何故長期高齢引きこもりは叩かれるのか?」
https://www.carpefidem.com/2017/12/12
の続きがありましたので、寸感を。筆者の方は前回と同じですが、前と比べたら、当事者側の奇妙な発言を入れてない分、相対的に見て「マシな」書き方になってると思います。ただ、やはり現実とは決定的に違うことが書いてありますので、そこを指摘しておきます。
国がいよいよ本腰を入れる「引きこもり支援事業」の本気度とは?
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180111-00155399-diamond-soci
端的に言えば、
1:社会参画を望む高齢引きこもりへの対策に国が13億円の予算を組んだので、
2:社会に出たいけど出られない人達の手助けになるといいね。
3:まあ、産経新聞のトバしは認めらんないけどね。
です。3の主張は相変わらず微妙ですが、1と2は事実関係だけなので、総合的には無難な記事だと思います。
筆者の方の1をまとめると、
〇「就労準備支援事業」による、脱ヒキ用家庭訪問と、地域就労のマッチング
〇「ひきこもり地域支援センター」に対する予算拡大
〇担当者教育を行う「ひきこもりサポーター養成研修」・「ひきこもりサポーター派遣事業」
〇引きこもり当事者に対する「情報のプラットホーム」「居場所」への援助
となります。
因みに、方向性自体を云々言うつもりはないのですが、コレ、予算のゼロが二つ三つ足りません。13億円って言うと、個人レベルでは凄そうに見えますが、都道府県で均等に分けたとすると、2800万円もないですからね。地方都市に戸建ての家買う位しかない。都心だと、ワンルームマンションすら買えない。家計で考えると、子供の小遣いのようなものです。
無論、都道府県も出しますから、多少は増えますが、それでも5,000万円超える位のお金しかありません。これを、また更に市区町村に分けるわけで、末端に来たときは数十万~数百万円にしかならんです。決定的に金が足らない。
前の記事でも書きましたが、長期高齢引きこもりの問題が手遅れなのは、筆者の言う「自治体の事業が当事者のニーズに十分寄り添えていない」とかいう、自治体バッシングで死者に鞭打つような根性論や精神論ではなくて、単に金不足・マンパワー不足なだけなんですよ。実際、自治体側でも、「事業化しにくい」「事業化していない」と「事業化したいが予算面で困難」と挙げているようですが、そりゃそうですよ。脱ヒキにかかる人的予算と、その後引きこもりが稼ぐ税収とのバランスが悪すぎる。長期高齢引きこもりの場合、アルバイト出来るだけでも万々歳なのに、そのレベルの所得税って、頑張ってもたったの5%ですよ? 自治体予算の住民税なんて、最初から徴収不可じゃないですか。
ただでさえ「三割自治」なんて言われて金不足の地方自治体に、これ以上のことを求めるのは無理ではないですか? 筆者の方は、自治体に親でも殺されたのかと勘ぐる位です。
これは私個人の意見ですが、恐らく、厚生労働省の方では、現行の長期高齢引きこもりは事実上無視する形で動いていると思っています。とは言え、ウルサイ人達もいて、何もやらないのも問題なので、とりあえず表面的には「私達一生懸命動いてますよ」アピールはするはず。これが、この13億円の実情だと思います。似たようなことが、老人介護の問題でもあったので、それと同じ戦略でしょう。
ただ、これを見て「厚労省はけしからん!」とか言うのはどうかと思います。寧ろ、経済性やモラル面から考えれば、現実的でバランスの取れた、非常に頭の良い判断をしていると思います。今後も予算を段階的に微増させることはあると思いますが、本気出すことはないでしょう。厚労省的には他にもっと重要なことがあるので、それらしいポーズだけしておいて、手遅れ系は実質的には見捨てる方向で動きを固めてるでしょうな。お金無いし。
因みに、上記事業についてですが、
〇「就労準備支援事業」による、脱ヒキ用家庭訪問と、地域就労のマッチング
について。家庭訪問は有効だと思いますが、これのネックは「人件費」でしょう。アウトリーチは有効性はありますが、兎に角金がかかりますし、特に今は人手不足ですから、労働単価を考えると、非常に難しいはず。現場的には、専任稼働人員が1名、兼任が2名とか、そんな感じになると思いますね。それでも、結構良い方かも知れません。
次の地域就労マッチングですが、これはまず上手くいかんと思いますよ。最低限、当事者を地域外に出さないとダメ。
引きこもり当事者は、地域社会を恐れていますからね。特に田舎の方だと、地域社会自体が狭いので、
「マッチングで入った会社の社長が、中学時代の後輩だったでござる」
とか、
「あれ? 役場の福祉で来たって言うあの太った男、昔の部活の先輩じゃね?」
なんてことが頻発するわけです。歪んだプライドしか残ってない彼等に、そんなことが耐えられると思いますか?
「脱ヒキ練習で来やした、無能なおっさんヒキでっす! 昔の後輩社会の先輩、オナシャっス!!」
とか言えれば良いんですけど、そんな人なら引きこもらないですからね。まあ、無理。
やるなら、都道府県単位で住所を変える位の方が無難ですな。ネタ扱いですが、北海道のおっさんヒキと沖縄のおっさんヒキを交換するとか。東京の長期ヒキと大阪の長期ヒキを交換するとかの、引きこもり交換留学制度とかね。
冗談はさておいて、要は、「自分のことなど誰も知らない新天地で、次の人生やり直し」ってことです。スネに傷のある元受刑者がやったりするアレと同じね。名付けて、「脱ヒキ湯けむりスナイパー戦略」。
そこそこ大人しくて、お年寄りとか好きな当事者だったら、マンパワー不足の限界集落で、日常生活を有料でお手伝いする自営業とか立ち上げても良いと思いますね。1時間1,000~2,000円位で、家の電球変えたり、掃除を手伝ったりする、簡単なホームヘルパーです。平均年齢60歳とかの世界だと、40代とか激若手ですから、重宝されますよ。
引きこもり当事者に必要なのは、安定的肯定感です。何のかんの言っても、誰しも人から必要とされていることが重要なわけで。そこを外すと上手くいかんでしょう。ヒキ履歴のあるエリアからの離脱は、案外有効なんですけど、まあ、これも結局はお金次第ですか。お国がやることではありませんな。
〇「ひきこもり地域支援センター」に対する予算拡大
〇引きこもり当事者に対する「情報のプラットホーム」「居場所」への援助
の二点は良いと思いますね。予算増やして悪いことはないと思います。
〇支援担当者教育を行う「ひきこもりサポーター養成研修」・「ひきこもりサポーター派遣事業」
についてですが、これ自体は悪くないと思うのですが、何かデジャヴが……と思っていたら、思い出しました。
昔「引きこもり支援相談士」なるものがあって、当時は関係者がワイワイ言っていたのですが、アレ、どうなったんでしょうか? 実際に取った人に聞いたところ、要は、脱ヒキした当事者に資格取らせて、引きこもり後輩の指導をさせようっていう、誰でも取れるFラン資格でしたので、
「こんなの意味ないから止めた方が良いよ。予算の無駄だよ」
と話したところ、当事者やその周辺の方々がお怒りだったので黙りましたが、その後全然話題に出ないですね。本当に機能してるんでしょうか? 実際に取った彼も、
「『時給5,000円の仕事がある』と言われたので取ったのに、実際に取ったら『そんな仕事無い!』って言われました……」
なんてこと話していましたが。
あまり言いたくないですけど、価値の無い認定制度に予算投入するから、本当に必要なところにお金が回らないんだと思いますが、その辺のところどうなんでしょうか? 少なくとも、同じようなルートにならないことを期待しますが、何というか、引きこもり関連って、こういうやっても意味ないもの多い気がします。
以上、まとめると、「長期高齢引きこもりへの本格的対策が始まった」のではなく、「極力普通の人達から悪者が出ないように工夫しながら、長期高齢引きこもりの終末期安楽死政策が始まった」の方が、幾分正しいというのが実情でしょう。
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