不登校・引きこもりからの大学進学塾

引きこもりからの就職事例

 少し前に、雑誌の取材を受けた際にまとめた報告のうち、有用と思われる卒業生からのアドバイスを掲載致します。今回は、大学進学を経由せずに就職した事例二つを紹介します。

事例1

◆現在の状況と経歴◆

 33歳男性。精密機械製造業の正社員で、主に精密機器のメンテナンスを担当。年収は400万円、残業等はあるものの、総合的に見て職場環境はホワイト寄り。

 中学時代から登校拒否になり、保健室登校を経て工業高校入学。ただ、その後すぐに退学し、通信制高校へ。高卒資格取得後、金属加工のアルバイトをしていたものの、勉強のためCARPE・FIDEMへ。大学進学はせず、中途採用でそのまま現在の職場に就職。

◆引きこもり期間について◆

 引きこもりの利点は特になし。敢えて言うなら、色々考えたり考えるフリが出来ること。

 問題点は、何もしないと本当に何もしないままダラダラと時間が過ぎていく点と、能動性皆無の人間だと容易に詰む点。自分を客観視出来なくなっていくため、ある程度人との繋がりがないと、自分が歪んでいっても矯正出来ない。

 また、自分の生殺与奪権が他人に握られているのは、とても心地悪い。引きこもってる自分が生きるか死ぬかは親次第。

◆自己評価◆

 手先を使うことが得意で、木工から鉄工、単純な電子工作まで大体何でも可能。逆に、注目を浴びるような場で人前に出ることや、人間を相手にすることが苦手。

◆今後の人生について◆

 現在は会社の関係で実家から出ているものの、実家周辺の環境は好きなので、いずれ戻って自分の工房的なものを作るのが何となくの目標。

◆後輩へのアドバイス◆

「小さくても、アクション起こせば何かしらリアクションあるんじゃねーの」が、後輩へのアドバイス。バイトも今の仕事も父親から提案され、決して自分で探したものではない。ただ、「(バイトや採用面接に)行くか?」と聞かれたその瞬間の選択肢で、「はい」を選んだぐらいのアクションでも、まあなんかとりあえず普通に生きてる感じになることもある。

事例2

◆現在の状況と経歴◆

 31歳男性。大手広告代理店所属のイベントディレクターで、出向契約社員。現在は高級輸入車のイベント企画立案と運営を担当。年収は420万前後、常時定時帰宅で、同僚との関係も安定的。これまでの経歴を活かしやすく、昇進の条件も揃っているため、非常にホワイトな環境。

 専門学校卒業後、5~6年の空白期間あり。その間は、NEETになった原因や、社会貢献や就職の方向性、過去の人生を自省する日々を送る。「引きこもりでも、生きるにはお金が必要」と気付き、CARPE・FIDEMを経由して現在の職場に就職。

◆引きこもり期間について◆

 人間には向き不向きがあるので、多様な方向性を検討する必要がある。一度つまずいたことで、徹底的に自分という存在について考える時間を取れた点、他人の考えや行動に寛容になれた点が、引きこもり期間の成果。一方、自身の精神的不安感に加え、家族に迷惑、心配、金銭的負担を強いてしまった点が、引きこもり期間の失敗。

◆自己評価◆

 決断力とコミュニケーション能力に長け、自分に出来ると思う仕事は何でも受ける積極的姿勢は長所。一方、数量の管理と、複雑なシステムが複数同時進行するような環境は苦手。

◆今後の人生について◆

 最近、同僚の結婚式に参列し、やはり結婚は良いものだと感じる。正直まだまだ未熟なので、まともな大人になりたい。

◆後輩へのアドバイス◆

 自分の限界を自分で決めず、成長し続けようと必死に毎日毎晩反省し、努力を続け、責任を全うしている人達をきちんと見て欲しい。悩みも葛藤もあるかも知れないが、その恐怖から逃げ、挑戦を止めることが最も危険。人生も結果もやってみなければ分からないし、その過程を楽しむことに意味がある。その結果として見えてくる景色が、先人達の苦労であり、苦労が分かるからこその尊敬の念であり、同時に自分自身が得られる達成感だと思う。

 

 引きこもりからの就職は概して低評価になる傾向がありますが、個々人の持つ能力を上手く活かすことで、将来性と安定度をある程度確保出来ることが分かっています。

 ただ、基本的には若年ほど有利なのは事実として変わらず、20代から動き始めれば障害も少ないですが、高年齢程不利になる点は否めません。今回の卒業生のように、若い段階で自分の特性を活かし、気持ちを切り替えて行動することが大切です。

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