不登校からの医学部受験には、特に数学対策が不可欠です。
「驚きました。駿台の東大模試で、理三A判定でした・・・・・・」
医学部へ進学した元不登校の卒業生
不登校 引きこもりに限定される話ではありませんが、医学部医学科を狙う場合、最優先にすべきは、何はともあれ数学です。
数学の利幅の大きさとその事情
特異的な能力保持者を選抜する場合、得点のべき乗がしばしば有効となりますが、現在の日本では、あくまで傾斜配点を加味した総合点での合否判定が主流で、受験業界の最上位層である医学部の選抜でも、それは変わることはありません。
一方、実際の合否状況では、得意科目によって合格率に変動があり、とりわけ数学が得意な子は、英語や理科が得意な子達よりも優勢を取りやすい傾向にあります。大半の大学における英:数:理の配点比率が1:1:1である点を鑑みるに、一見すると奇妙に見えるこの現象ですが、実は事情があります。
例えば、学習スタート時こそ、やる気の有無等を原因として差のつきやすい理科は、ある程度まで進むと伸びしろに上限が発生し、ほぼ全員が横並び一線となります。「物理で時間を短縮させ、化学の時間を確保する」などの戦略は取れたとしても、全員が全員似たような戦略を取れば、差異化にも限界が発生しますから、最終的には皆似たり寄ったりのスコアになります。
また、詳細は回を改めますが、英語についても同様のことが言え、特に「英文読解」や「英文和訳」、「英文法」の3項目については、上位層になるほど、スコアが一定値に収束します。
しかし、数学だけはこのような現象が発生しません。無論、ある程度の段階的収束値は存在するのものの、「天才群」「努力の限界まで極めた群」「普通の合格者群」とでは全くスコアが異なり、特に「努力の限界まで極めた群」と「普通の合格者群」との差は大きく、平均的には、本番でも15~20%の差が確認出来ます。従って、差のつきやすい数学にエネルギーを投入し、他を圧倒出来れば、医学部受験での有利は揺らがないものとなります。
不登校から立ち上がった努力家達の足跡
そこで今回は、数学で受験を有利に進めていた子達に協力を仰ぎ、どのような学習スタイルを意識していたか調査してみました。調査は、
○実際に医学部医学科へ進学した元不登校 引きこもりのCARPE・FIDEM卒業生
○汎用性を優先し、IQ値が極端に振り切れた子達は対象外とする
の二点を要とし、平均的な能力値を持つ学生さんに有効と思われる部分のみを抽出しています。ボリュームゾーンとしては、東大他帝大系・東工大・地方国公立医学部・早慶(理工)レベルの受験生が目安となります。
1:定石問題は定石通りに解答する
医学部受験の要諦は、「手堅さ」にあります。合格する子達の大多数は、「定数分離&微分」「推移図による確率漸化式」等、定石問題は定石問題として、あるべき最短ルートで確実に満点を取っています。逆に、成績の伸びない子達は、定石問題に我流でアタックしては時間をロスしたり、わざわざ面倒な解法を選んでは、計算ミスを誘発させています。勉強不足の場合には、そもそも定石問題であることさえ見抜けない事例が見受けられます。
医学部とは言え、5問中大体3問は定石問題で構成されているのが一般的ですから、定石問題を絶対に外さないことが、合格への第一歩です。
2:傍用問題集レベルのパターン問題一単位を意識し、階層毎に一つ一つ処理する
若干難しいように見える問題でも、解答ルートを俯瞰すると、パターン問題の組み合わせで構成されていることに気がつきます。例えば、以下の例を見てみましょう。
これは、初心者には難しく感じる一方で、経験者には容易に見える定石問題です。①~⑧の項目を追跡すると分かるように、一つ一つのテーマは教科書傍用問題集のレベルに留まり、特段難しいポイントは存在しません。定石問題は、その内部に小さく区分された平易なパターン問題を内包しており、それらを一手一手クリアすることで完答出来るように構成されています。従って、まずはこの主要パターンを網羅し、適切な順序での処理することが求められます。
3:数学の教科書と傍用問題集をバカにしない
まれに、河合塾全統模試のような標準的な難易度の試験で、「解けるときは解けるけど、ダメなときは全滅」みたいな話題を持ってくる子がいますが、このタイプは、「基本をとばして、よく出るちょっと難しい有名問題を暗記している」に過ぎません。実際にテストをしてみると、教科書の章末問題さえ解けないことが多く、「解ける」と思っている認識自体が、ほぼ虚像に近いことが分かります。
この状況から脱却するには、まず教科書の要点整理と傍用問題集を一から丁寧に解くことが必要で、特に数学ⅠAについては、指導者から要点を整理して貰った上で、抜けの無い学習が求められます。
天才的な閃きを持つ人はどのような学習でも構いませんが、私達のような凡百は、偉大な先人達の成果に縋らないと絶対に成長出来ません。そして基本にこそ、先人達の遺した要点がちりばめられています。くれぐれも、基本を疎かにしないようにしましょう。
4:既習範囲の復習には、一テーマあたり0~30秒を目安とする
経験則ですが、CARPE・FIDEMにおける医学部受験生の二次試験直前期の学習時間配分は、概算で、
未知の問題へのチャレンジ:既知の問題の復習:過去問演習=1:5:4
となっています。仮に1日10時間の勉強時間があるとすると、復習に5時間近いウェートを割いている計算になりますから、一見すると復習過剰にも感じられます。
しかし、これを主要科目で割ってみると、せいぜい各科目1時間程度。元々ボリュームの多い数学でさえ、1日に割ける復習時間が1時間程度と考えると、かなり心許ない数字です。それでも広域にわたって復習せざる得ないとするなら、有名問題の復習でも、せいぜい一テーマあたりにかけられる時間は30秒が限界となります。
無論、手が追いつきませんから、30秒の復習では筆記は使えません。そのため、ここでは、
「問題の確認」→「解法の概略を脳内で想定」→「解答を見て正誤チェック」
という、解法ルートの確認を目視と脳内でのみを行い、具体的な計算は行いません。具体的な計算は、過去問演習の内部で実施します。
この復習の良いところは、繰り返すうちに問題自体を暗記してしまい、最終的には頭の中で全ての復習が完結出来る点にあります。復習が脳内で完結するなら、復習時間は実質0秒となり、空き時間を過去問演習や、未知の問題への挑戦に充当することが可能となります。
復習が追いつかないと悩んでいる場合には、単位問題あたりの復習時間を短縮し、時間密度の向上を心掛けてみましょう。
5:添削によるチェックを怠らない
試験に限りませんが、独善は失敗のもとです。自分では出来ているつもりでも、実際の試験で得点出来ていないことなど、多々あります。特に数学はこの傾向が顕著で、「答だけ当たっていれば大丈夫」ということはほぼありません。
そのため、必ず第三者によるチェックを受け、「出来ているつもりで実は0点」という箇所を丁寧に潰す必要があります。経験則上、添削を拒否する子はほぼ受かりません。保身は必ず身を滅ぼす現実を知っておきましょう。
6:問題の難易度から、配点の推定を行う
入試問題には採点基準がありますが、通常はサンプルを抽出して調査採点を行い、全体の出来具合を見てから採点基準を作成します。そのため、皆が解けている問題に対しては採点も辛く、誰も解けていない問題には採点も緩くなります。より具体的に言うなら、易問に対しては、ほぼ完全な○でないと点がつかない一方、難問に対しては、答が全く当たっていなくとも、解答方針や途中経過への部分点が大盤振る舞いされる傾向があります。
従って、難易度の低い問題はミスの低減を最優先に考え、難問については、計算の正確性よりも解法ルートの正しい選定にエネルギーを割くべきです。無論、全て正確であることが望ましいのですが、多忙と緊張で張り詰めた現場でそのような芸当は困難です。限られた資源を効率良く活用する方法が求められます。
以上6項目は、標準~やや上程度の能力値に留まる平均的な受験生に対しても、有効性が高いことが確認されています。「努力しているのに、成績が伸びない・・・・・・」「何をどうして良いのか分からない・・・・・・」等の際には、一度参考になさって下さい。
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