元引きこもりだからお金が無いとも限りません・
「金は命より重い」
「逆境無頼カイジ」
金しか語らない人は下品ですが、金を語らない人が上品とも言えません。ただ愚かなだけの可能性があります。
不登校・引きこもりの年収に関する局所的なデータ
不登校や引きこもりの状態から、その後どのような人生を送るのか? 個々人の人生は多様ですので、一概にその善し悪しを数値的に計ることは出来ませんが、幸い、経済的な要素に限定するなら、数値でもある程度は計測可能です。そこで、CARPE・FIDEMの卒業生に加え、関連する協力者の方々により集められた情報から、
A:脱ヒキ群(高等教育有) 元不登校・引きこもりで、大学進学をきっかけに引きこもりを止めた群
B:脱ヒキ群(高等教育無) 元不登校・引きこもりで、大学以外をきっかけに引きこもりを止めた群
C:引きこもり群 現状で引きこもりから抜けていない群
の3通りに分類し、年齢と年収の相関性を散布図にしました。まだ集計途中で全て把握出来た訳ではありませんが、大筋の傾向が見えましたので、Ver1.00という形で公開します。(追加があり次第、更新する予定です。)
尚、この散布図には以下の注意点があります。
1:推定では、A群は少数派であり、B群は総数不明、C群は圧倒的多数派であると推察されるものの、各母数が比例配分されていないため、全体平均と中央値に歪みがあること。(そのため、全体平均・中央値は出力していません。)
2:A群は主に首都圏からサンプリングされている一方、B群とC群は国内全体でサンプリングされていること。
3:A群には、特殊な経歴により所得を大きく押し上げている者が数名おり、また所得の高い医師や外資系企業勤務者も含まれていることから、平均値は押し上げられていること。
4:A群の20代には、所得の少ない大学生・院生が一定数存在し、平均値を押し下げていること。
5:A群の20代には、将来的な所得水準の高い医学部・医学科生が一定数入っていること。
6:A群には、医療系専門職や優良企業勤務の者が相当数いるため、30代での所得上昇値が全体的に高めであること。
7:A群には、40歳以上の実例が少ないため、存在しても統計に出ていない要素があり得ること。
8:B群は、何らかの引きこもり支援現場在籍から、大凡3年以内の者が中心であり、それ以上の追跡は難しいこと。
9:B群には、引きこもりから脱しても就業をしていない、或いは、ボランティア等により所得の無い者も一定数いること。
10:C群は、親等の親族関係者からの聞き取りによるものが過半数であること。
11:C群には、所謂「親からのお小遣い」は入っていないこと。
A群(高等教育を受けた元不登校・引きこもり)
脱不登校・脱引きこもり後の進路先としては、比較的高度な教育水準にあるケース(所謂Fラン大学を除外した一定以上のレベルの大卒)をまとめたものです。東大や京大、早慶他上位の難関大学卒業者も珍しくないため、社会全体の相場と比しても水準がやや高めになっています。これは、不登校や引きこもりがあったにしても、通常ルートに回帰することで、一般的な経済水準かそれ以上のパフォーマンスが可能であることを示しています。
一方、A群の最大の問題点は、50歳以上の統計がほぼ無い点にあります。実際は不登校・引きこもり経験者だったにしても、普通の社会人として生活していると統計に入れる機会がありません。そのため、全体的に若年層を基準とした統計に過ぎないことを把握しなくてはなりません。
また、現状での線形予測はプラスになっていますが、年功序列賃金制が崩れつつある現状を考えると、傾向がそのまま推移することはなく、緩やかな下降線を描くものと考えるのが妥当でしょう。この辺は、社会一般の事情と何ら変わりありません。
特筆すべき点としては、30代で2,000万円を超える高所得層が少数ながらおり、1,000万円越えも少なからず存在している点です。これは、
○医師
○会社役員
○外資系金融機関従業員
の三者が原因と推察されます。いずれも、社会全体の平均から大きく乖離する存在ですが、20代での選択が適切であった場合、不登校や引きこもり経験者であっても、経済的にはかなりの余裕を持つことが出来る点が伺えます。年功序列が事実上解体され、若年層程有利にはたらく情勢を追い風にした結果とも言えるでしょう。
また、上記以外にも、それに準ずる層まで含めると経済的に余裕のある群は比較的多く、優良企業従業員を中心として、長期の好景気を反映した形になっています。
B群(高等教育を受けていない元不登校・引きこもり)
脱不登校・脱引きこもり後の進路先としては、教育水準が中~低(所謂Fラン大学・短大・専門・高卒・中卒)群をまとめたものです。部分的に高い水準を示すこともありますが、全体としては低調気味で、概して昇給らしい傾向が見られず、寧ろ、中・高年齢程所得水準が下がる傾向にあります。これは、B群の勤務先がアルバイトや契約社員、派遣社員等、高年齢層に厳しく、所得と雇用に「頭打ち」が存在するためと推察され、この場合の上記の平均年収は200~250万円前後です。不登校や引きこもりという経歴がなければ、もう一段階高い所得水準にあると推察されますが、社会参画の経験不足と遅延が相対的に下降圧力を加えている可能性があります。
また、一定数の年収0~100万円という「親の扶養から脱出出来ない群」が存在し、彼等の所属は、
1:アルバイト従業員
2:ボランティアスタッフ
3:NPO法人従業員
が中心となっています。
2と3には、引きこもりから抜けた後、一般的な就職が困難だったことが原因で、支援側の斡旋でスタッフをしているケースが3割前後見られます。ただ、支援組織の財務基盤が脆弱なため、活動場所を転々とする人の姿も確認されています。
尚、少数ながら500万円以上のケースもありますが、これは「高齢化した親の事業を受け継いだ」「親族の関連する企業に縁故採用された」のようなケース、或いは、情報系の学部や専門学校を卒業し、採用面で恵まれていたため就職が容易で、その後も安定的に推移した等のレアケースが該当するようです。
若年期こそ就業先は確保されていますが、全体的に安定性に乏しく、高齢化するにつれて所得水準が下がる傾向にあるのが、この群の特徴です。年齢が40歳を超えると、500万円を超過するケースは今のところ無く、線形予測も緩やかなマイナスになっています。
引きこもりを脱したB群ですが、年金を含めた社会保険が脆弱な点を鑑みても、加齢と共に困窮する人々が一定数で発生する可能性は高いものと推察しています。また、引きこもりを脱しながら、事実上の所得0に留まる群が、全体の平均を押し下げている点も考慮に入れる必要があるでしょう。
C群(現段階で引きこもり状態にある)
依然として、引きこもりが改善されていない群をまとめたものです。B群に対しては約6分の1前後、A群に対しては実に20分の1以下の年収しかなく、経済的にはどん詰り状態と言えます。一部に500万円前後のケースも見受けられますが、これは保有株式の売却に伴うキャピタルゲインであり、一時的な数値と言えます。(配当によるものが、年間30万円程。)
C群の大半は基本的に無収入で、親からの「お小遣い」を趣味や買い物に充てたりすることで日々暮らしています。用途は様々ですが、30代を中心として、最近はスマホ関連のゲーム費に充当するパターンが多いようです。
年収0が最頻値かつ中央値ですが、50万円以下の小規模な収入があるケースもあります。親からの「お小遣い」を除外した収入の収入源としては、多い事例順に、
1:株式・FXによる金融商品の取引(-1,000万円~500万円/年)
※マイナスは信用取引による値。
2:オークション等による家財品の売却(1万~30万円/年)
3:一般商品の転売(-100万円~100万円/年)
※マイナスは、不良在庫によるもの。
4:アフィリエイト・YouTube等のインターネット関連収入(ほぼ0万円/年)
5:親族・知人からの雑務(1万円~10万円前後/年)
6:イラスト作成等によるアート関連収入(10万円~100万円/年)
7:ライター・翻訳業務収入(10万円~150万円/年)
となります。
1:ギャンブル性が強く変動幅の大きい「金融商品の取引」が最も多く、しかも半数近くが親拠出の資金であることから見ても、依然として「親の金で一攫千金」を考える引きこもりは少なくないようです。ただ、その実態はかなりお粗末で、十分な収入と言える事例はほぼ存在せず、定期的な暴落で撤退するケースが多いようです。尚、信用取引が原因で親子関係が破綻する事例は残っており、お薦め出来ない方針であることは以前と変わりません。
2:「家財品の売却」は、家庭の内部にあるものを安価に売却するもので、対象は引きこもり当事者個人の所有物というよりは、寧ろ親族関係者の誰かの物であることが多いようです。無断売却の事例も聞きますが、「自分の足を食うタコ」のような行為の上、継続性に乏しいため、お薦めはしにくいです。
3:配達が増えることも一つありますが、自室に得体の知れない大量在庫が積み上げられており、それが廊下まではみ出てきて、家族が「転売」に気付くことが多いようです。在庫処理が出来ず、家族への無心が続く面から見ても、収支の良いケースは稀です。
4:特に語る必要はなく、引きこもりの「アフィリエイト」「YouTube」による成功例はほぼ存在しないようです。ただ、YouTuber的活動による収益性はまだ未知の部分が多く、十分に統計に反映されているとは言えません。後の状況によっては好転する可能性があります。
5:比較的軽度な引きこもりor社交性のある引きこもりの場合、市場を経由しない軽作業的「雑務」で多少の所得を得ることがあります。あくまで「お手伝い」の延長のようですが、社会復帰の初期段階として見れば、好意的手段とも言えます。
6・7:「引きこもりが絵を描く」「引きこもりが文章を書く」と言うよりは、元々アートの感性に長けている人や、文章力に長けた人が、たまたま引きこもり生活に堕してしまった結果として、日々の糧を得るために選んだ手段が「アート関連収入」「ライター・翻訳業務収入」です。全体の中では最も現実的かつ社会性を持つ手段ですが、元々が引きこもりと関係無いケースもあるため、引きこもり当事者の収益事例として適切と言えるかどうかは微妙なところです。
初回での集計は以上となりますが、まとまった時間が取れ次第データを更新致します。偏りがある点は認めた上で、参考までにご利用下さい。
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